身体を温めることは、血流促進による冷え症改善、心身のリラックス、発汗による新陳代謝アップなど、様々なメリットがあります。そんな中、注目を集めているのが、ヒートショックプロテイン(HSP)の存在。体を温めることで増えるHSPが、美容や健康の促進を大いに助けてくれるのです。

ヒートショックプロテイン(HSP)とは、傷ついた細胞を修復するタンパク質のこと。免疫力を高めて病気を未然に防いだり、コラーゲンの減少を抑制したり、代謝を活発にして脂肪を燃やしたりと様々な効果があり、医療の分野はもちろん美容分野でも注目されています。そもそも、人間の身体のあらゆる組織や細胞がタンパク質で構成されています。しかし、タンパク質は傷つきやすい性質であり、過度なストレスを受けると正常な働きができなくなってしまうのです。一方で、タンパク質が傷つくと、それを修復するタンパク質が生まれます。それが、HSPなのです。

 

医療面での効果

HSPは免疫細胞の一種であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化させる働きがあります。NK細胞はがん細胞や病原菌を発見し退治する細胞ですから、体内にウイルスが侵入しても病気が発症しにくくなるのです。また、HSPそのものも、がん細胞と結合して自身ががん細胞であることを指標(専門的には提示抗原と言います)するのだとか。これにより、小さながん細胞をNK細胞が発見できるようになり、より効率的に駆逐することができるそうです。

 

美容面での効果

HSPは、肌を若返らせる効果もあります。具体的には、メラニンの生成を抑える。紫外線による細胞へのダメージや炎症を抑制する。紫外線によって傷ついた皮膚のDNAの修復を促進する。コラーゲンの質の向上、産生量を増加させる。コラーゲンの分解酵素を抑制する、などなど。HSPには種類があり、HSP47はコラーゲンと結合して変異を修復し、HSP70は紫外線ダメージによるシミ・シワを予防・修復します。

 

ヒートショックプロテイン(HSP)の増やし方

HPSはストレスを感じると増加します。緊張や運動、加圧、低酸素、紫外線、放射線などストレスの原因になるものはたくさんありますが、HPSを増やす最も手軽な手段として知られているのが入浴。「ヒートショック」と名付けられていることからも、熱ストレスが最も有効な手段だと言えるでしょう。42度の加温で体温を38度に上げることがHPSを最も増加させると言われています。

 

HSPを増やす入浴方法

  1. 入浴前に十分な水分補給を行う(目安は入浴前後で500ml)。
  2. 舌下温が測れる体温計を用意して入浴。
  3. 40度~42度の浴槽に10~20分つかり、体温が38度以上になるよう温める。
  4. 入浴後はバスタオルなどで全身をくるみ、熱を逃さないよう10~15分間安静に。
  5. 保温した後は、自然に体温を戻す。水分補給もしっかり行いましょう。
  6. 上記の入浴を週2回行う(HSP量が最大になるのは入浴2日後)。
  7. 効果が薄れてきたと感じた時は、この入浴法を1~2週間ほど休む。

入浴時の注意事項

冬場は入浴中の事故が多く、日本では毎年約4000件もの死亡が報告されています。その原因と考えられているのが、ヒートショック(HSPが増える反応のことではなく、住環境の温度差によって血圧の乱高下・脈拍変動が起こること。)温かい部屋から寒い浴室に移動することで血管が縮み、お湯につかることで血管が急激に広がります。血圧が激しく変動することで心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患が起こってしまう現象です。そして、死亡事故が最も多いとされているお湯の温度が42度。冬場の入浴は十分に注意してください。ヒートショックを回避するには、脱衣所や浴室を十分に温めてから入浴することが重要です。