「唾液」の重要な働き
「健康」との深いかかわり
食べ物をよく噛むと唾液がたくさん出ます。唾液には、口の中の食べ物のカスや細菌を洗い流す働きがあるのは知っている方も多いでしょう。そのほかにも、唾液は歯や歯茎をはじめ、からだの「健康」や機能に深いかかわりを持っているのです。
唾液の「8つの働き」
唾液は、以下のような重要な「8つの働き」を持っています。
- 化学的消化作用
「唾液アミラーゼ」の働きによって、デンプンを分解します。
- そしゃくや飲み込みの補助作用
そしゃくや飲み込みを補助します。
- 円滑作用
口の中を湿らせ、発音をスムーズにします。
- 溶媒作用
食べ物を溶解し、舌で味覚を感じさせます。
5.洗浄作用
食べ物のカスや、細菌を洗い流します。
- 抗菌作用
リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリンが、病原微生物に抗菌作用を示します。
- pH緩衝作用
お口の中の急激なpHの変化を防ぎます。
- ミネラル補給作用
歯にカルシウムや、リンなどのミネラル分を補給します。
「唾液」はどこでつくられるの?
「唾液腺(だえきせん)」という組織でつくられる
唾液は、「唾液腺(だえきせん)」という組織でつくられます。唾液腺には三大唾液腺と呼ばれる「耳下腺」「顎下腺」「舌下線」と、唇の裏などに多数存在する「小唾液腺」があります。
唾液は「血液」からつくられる
ところで唾液は何からつくられるのでしょう? 私たちのからだは、多くの水分でできていますが、この水分が直接唾液になるわけではありません。唾液腺では、まず血液の液体成分(血漿成分)を細胞に取り込み、細胞内でつくられる種々の物質が加わることで唾液のもとがつくられます。唾液の元は口の中に分泌されるまでに、さらに水分や電解質の量が調整され、最終的に唾液となります。
「よく噛むこと」と「噛みあわせ」の大切さ
「ヒミコノハガイーゼ」の効用
よく噛んで食べることは、食べ物を飲み込みやすくするだけでなく、食べ物がおいしくなったり、消化・吸収を助けたり、健康に役立つ効果がいろいろあることを知っていますか? よく噛むことの効用がわかる「卑弥呼の歯がいーぜ!(ヒミコノハガイーゼ)」という標語をご紹介します。
1.「ヒ」肥満の防止
よく噛んで食べることで、食べ過ぎを防ぎ、肥満の防止につながります。
2.「ミ」味覚の発達
食べ物の形やかたさを感じることができ、食べ物の味がよくわかるようになります。
3.「コ」言葉の発達
口のまわりの筋肉をよく使うことで、あごの発達を助け、言葉の発音がキレイになったり、顔の表情が豊かになったりします。
4.「ノ」脳の発達
脳に流れる血液の量が増えて脳を刺激するので、子どもの知育を助け、大人は物忘れの予防に役立ちます。
5.「ハ」歯の病気予防
よく噛むと、唾液がたくさん出ます。唾液には口の中の食べ物のカスや細菌を洗い流す働きがあり、むし歯(虫歯)や歯肉炎の予防につながります。
6.「ガ」ガンの予防
唾液に含まれるペルオキシダーゼという酵素が、食品に含まれる発ガン性物質をおさえることでガンの予防につながります。
7.「イー」胃腸快調
消化を助け、食べ過ぎを防ぎます。また胃腸の働きを活発にします。
8.「ゼ」全力投球
身体が活発になり、力いっぱい仕事や遊びに集中できます。
よく噛んで食べるための「工夫」
以下に、よく噛んで食べるための「工夫」をご紹介します。
- 1口30回を目標に
ゆっくりと味わって食べましょう。食べ物によって噛みごたえは違います。噛みごたえのある食べ物は、1口30回を目安によく噛んで食べましょう。
- 飲み物で流し込まない
食べ物が口の中にある時は、飲み物をとらないようにしましょう。よく噛むと、食べ物が細かくなり、自然に飲み込めるようになります。
- ひと口入れたら箸をおく
ご飯をひと口入れたら、箸を一度おくようにしましょう。
「噛みあわせ」が全身の健康に影響する
正常な「噛みあわせ」は、美しい笑顔、楽しい会話、全身の健康に関係します。「正常咬合」とは、歯並びが良く、正しく噛み合っている状態のこと。対して、歯並びの悪い状態を「不正咬合」と呼びます。
「歯並び」を悪くする原因
以下に、「歯並び」を悪くする原因をご紹介します。
- 永久歯の生えてくるスペースの問題
歯並びを悪くする原因
乳歯の時期にむし歯(虫歯)などが原因で乳歯を抜いてしまうと、そのまわりの歯が移動し、次に生えてくる永久歯のスペースが狭くなります。
- 悪い習癖
指しゃぶり、口呼吸、鉛筆やつめを噛む、ひじをつくことなどにより、歯並びが悪くなります。
- あごの発育
歯とあごの発育のバランスが悪いと、歯並びにも影響します。
- 遺伝
両親からの遺伝によって歯並びが悪くなることもあります。
「不正咬合」による影響
以下に、「不正咬合」による影響をご紹介します。
- 噛みにくい
食べ物が上手に噛みにくくなります。
- 発音への影響(不明瞭な発音)
発音が不明確になりやすく、特にサ行、タ行、ラ行が発音しにくくなります。
- むし歯や歯周病になりやすい
歯垢がたまりやすく、むし歯や歯周病になりやすい傾向があります。
- 顎関節症にかかりやすい
顎関節症にかかりやすくなります。あごの関節に音がしたり、痛みで口が開けづらくなったりします。
「噛まない子」や「噛めない子」にしないためには?
「よく噛んで食べる習慣」を身に付ける
軟食・飽食の時代といわれている現代、「噛まない子」「噛めない子」が問題になってきています。子どもの頃から、「よく噛んで食べる習慣」を身に付けることが大切。幼児期から学童期にかけては、そしゃく機能を育てる大切な時期なので、ご家庭においても指導が必要です。食事やおやつに噛みごたえのある食べ物を取り入れましょう。自然と噛む回数が増えます。