カラダにとって不可欠な体液が不足した状態を「脱水症」と言います。よく誤解されるのですが、脱水症とは単なる水の不足ではありません。脱水症は体液が失われた状態ですから「カラダから水分が失われるだけではなく、電解質も同時に失われた状態」のことです。
「脱塩水症」の方が近いともいわれています。脱水症は、汗などで体液が失われた場合、そして体液の供給が不足した場合に生じます。
〇脱水症はなぜカラダに悪いの?
体液に含まれる水分と電解質は、生命の維持に不可欠な働きをしています。その体液が脱水症で失われるとカラダにさまざまなトラブルが生じます。脱水症の症状は、水分が減ることによるものと電解質が減ることによるものの2つが複合したもの。
まずカラダから水分が失われると、それだけ血液(血漿)の量が減り、血圧が下がります。すると肝臓や消化器といった臓器を巡る血液量が減り、必要な栄養素を配ったり、不要な老廃物を排泄したりする能力がダウン。脳の血流が減ると集中力が低下しますし、消化管の血流が減ると食欲不振が起こります。
同時に電解質が失われると、体液が濃い部分を薄め、薄い部分を濃くしようとする浸透圧が維持できなくなります。この作用はナトリウムイオンが多くを担っています。カリウムイオンやカルシウムイオンが不足すると、神経や筋肉に悪い影響が出てきて、脚がつったり、しびれや脱力が起こったりします。
〇脱水症には次の3つのタイプがあります。
①高張性脱水(体液の浸透圧が高くなるタイプ)
②等張性脱水(体液の浸透圧が正常なタイプ)
③低張性脱水(体液の浸透圧が低くなるタイプ)
脱水症は水分と電解質(主にナトリウム)が失われた状態ですが、水分と電解質のどちらがより多く失われるかで、3つのタイプに分かれます。電解質より水分が多く失われて体液がいつもより濃くなった状態が①高張性脱水で、汗をかいた時に喉が渇くのはこのタイプです。汗をかくスピードが速いほど、汗中の電解質濃度は高くなりますので、より電解質が多く失われます。
電解質と水分が体液と同じ割合で失われるのが②等張性脱水です。下痢や嘔吐のように体液を一気に喪失してしまう時におこります。水分より電解質の方を多く失い、体液がうすくなった状態が③低張性脱水です。大量に汗をかいて、電解質を多く失っているのに、電解質濃度の低い飲料や水・お茶などを大量に飲んだときなどにおこります。また高張性脱水で認められる、のどの渇きはあまり感じられません。
脱水症が「どの程度ひどい状態なのか」という重症度は、通常は体重の減少率を目安にします。体重減少が1~2%に留まっている場合は、脱水症がないか軽度の脱水症です。見た目にはわからない脱水症で、のどが渇いたり尿量が少なくなったりします(いわゆる“かくれ脱水”のことです)。
体重減少が3~9%であれば、中等度の脱水症。中等度以上の脱水症になると、けんたい感、頭痛、嘔吐、めまいなどが起こり、喀痰(痰)を出すのが困難になったり、血圧や臓器の血流低下といった症状が出てきたりします。10%以上になると高度の脱水症で重篤な症状を示します。
〇治療法とセルフケア
①涼しい環境と冷却がポイント
室内では無理はせず、扇風機やクーラーを活用し、適度な気温、湿度を保ちましょう。もし外出先などで体調に異常を感じたら、風通しのよい日陰や、クーラーが効いている室内へ。きついベルトやネクタイはゆるめ風通しを良くし、体からの熱の放散を助けます。皮膚に水をかけ、うちわや扇風機などであおぎ、体を冷やすのも方法の一つです。いかに早く体温を下げることができるかが悪化させないポイントです。
②水だけでなく塩分も補給
一度に大量の水を摂取すると、かえって体内の電解質のバランスが崩れ体調不良を引き起こすことも。水分補給をする時には、あわせて塩分の補給も行いましょう。水分と塩分を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液、また水や麦茶には、塩や梅干しなどを足して塩分も補給しましょう。緑茶やウーロン茶に含まれるカフェインは利尿作用があるため要注意です。
③日頃からこまめな水分補給を
のどが渇いていないから、汗をかいていないから大丈夫と思いがちですが、すでに体液が減少している場合も。いつもより尿の色が濃く、量が少ない場合はすでに体内の水分不足が起こっています。のどが渇く前からのこまめな水分、塩分補給が脱水症、熱中症予防には大切です。熱中症の発生は、当日の水分、塩分不足だけではなく、数日前からの不足が原因で発生します。常日頃から水分と塩分の補給を心がけましょう。
④ミネラル入りむぎ茶で血液さらさら
熱中症対策に「ミネラル入り麦茶」が効果的という研究結果が。従来から言われている体温降下効果だけでなく、血液をサラサラにする効果も報告されています。医薬品ではなく一般食品のため効果は緩やかですが、刺激物であるカフェインも含まないため、誰でも安心して飲める夏にピッタリの飲料です。
⑤健康状況を毎日チェック
睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取等は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあります。毎日の健康管理も、熱中症予防には大切なことです。
〇風邪気味ではないですか?
鼻づまりで就寝中に口呼吸することが多いと外気に接する粘膜面積が増え、体の水分の蒸発量が増えることがあります。また、発熱、下痢、嘔吐なども体内の水分や塩分が失われやすい状況なので、普段以上に熱中症に気をつけましょう。
〇寝不足ではないですか?
脳や体を休ませる睡眠が不足していると、脳の働きが鈍くなり体温コントロールも難しくなってしまいます。特に前夜が熱帯夜で睡眠不足の場合、就寝中の発汗量も多くなるので翌朝は十分な水分補給を。
〇前日、飲み過ぎてはいませんか?
大量な飲酒は、アルコールの分解に水分を使うことに加え利尿作用も。翌朝は普段より脱水状態になっているため、十分な注意が必要です。
〇朝食を抜いていませんか?
朝食を摂ることで、水分だけでなく塩分も補給することができ、体温を下げる効果のある汗も出やすくなります。夏バテで食欲がないことが多い時期ですが、意識して朝食を摂るようにしましょう。